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No.16

無職の高齢者の逸失利益

千葉地裁平成元年2月28日判決交民22巻1号239頁

現に稼働していたか稼働することが確実でない限り平均賃金に基づく逸失利益の請求は認められないとした事例

弁護士のコメント

この判例は、無職高齢者の場合に平均賃金に基づく逸失利益が認められるかという問題を取り扱っています。逸失利益の算定については、無職であっても、交通事故での受傷時に将来稼働して収入を得る蓋然性があれば、平均賃金を元にした逸失利益が認められます。しかし高齢者で年金を受給している場合には、働く蓋然性がないとして平均賃金を前提とした逸失利益は認められない方向になります。その場合であっても、就職活動をしているなど就業の蓋然性を示せば、具体的に得ることができたであろう収入を前提に、逸失利益が選定されます。

事案

A(男性65歳)は、事故により死亡した。事故当時は無職だった。遺族は稼働収入の逸失利益があると主張した。

判決

Aは年金の収入のみによって生計を維持していたのであって、他に稼働していた訳ではなく、同人が現に稼働していたとか、あるいは稼働することが確実であつたなど特別の事情の認められない限り、平均賃金に基づく逸失利益の請求は認められないというべきである。

No.17

外国人の逸失利益(不法在留)

最高裁平成9年1月28日判決民集51巻1号78頁

労災事故にあった不法在留中のパキスタン国籍のAの基礎収入額が問題となった事例

弁護士のコメント

この判例は、外国人の逸失利益の算定について、その資料をどこの国の賃金を基準にするのかという問題を取り扱っています。外国人の逸失利益の算定は本国で生活している場合は本国の収入を基礎として計算します。また、日本で生活し、永住権をもっている外国人の遺失利益の算定は、日本の賃金を基準とします。この判例は、短期のビザしかない外国人の場合には長期期間の在留資格がないことを考慮して、3年間は、日本での収入を基礎として、それ以後は、本国での収入を基礎として計算しています。このように短期間のビザの場合には、3年前後の短期間のみ日本の収入を基準とした逸失利益の算定がされます。

事案

不法在留の外国人が、就労中に労災事故に被災して後遺障害を残す傷害を負ったため、使用者である被会社等に対して損害賠償を求めた。

判決

予測される我が国での就労可能期間ないし滞在可能期間内は我が国での収入等を基礎とし、その後は想定される出国先(多くは母国)での収入等を基礎として逸失利益を算定するのが合理的ということができる。そして、我が国における就労可能期間は、来日目的、事故の時点における本人の意思、在留資格の有無、在留資格の内容、在留期間、在留期間更新の実績及び蓋然性、就労資格の有無、就労の態様等の事実的及び規範的な諸要素を考慮して、これを認定するのが相当である。

No.18

外国人の逸失利益(資格・職歴を持つ者)

名古屋地裁平成16年9月29日判決交民37巻5号1341頁

高度の学歴を有する外国人の逸失利益が問題となった事例

弁護士のコメント

外国人の逸失利益の算定について、日本の平均賃金を用いるか、外国人の本国の賃金を用いるかは、原則として、№017のコメントで述べたように、在留資格によって分けられます。それでは、短期のビザしかない場合には、逸失利益の算定について本国の平均賃金を用いられるのでしょうか。この判例は、成績優秀者として、日本で奨学金を受給していた中国人(上海)Aについて、日本で留学した経緯から本国に帰国した場合でも、日本人に準じた所得を得る蓋然性が高いと評価して、遺失利益の算定について日本の男性高専・短大卒の平均賃金を用いて算定しました。このように、短期のビザしかなく、在留資格から本国に帰国すると判断された場合であっても、本人の能力経験から高所得を獲得する蓋然性がある場合については、中国人であっても日本人に準じた平均賃金を用いられます。

事案

A(中国系)は,中国において高度かつ専門的な教育を受けており、中国で日系企業での職務経験もあったが、日本で将来就職する目的で日本の大学に進学していた。Aは交通事故で死亡した。

判決

Aの逸失利益については,今日の中国なかんずく上海市の目覚ましい経済的発展を併せ考えると,亡Aが未だ25歳の若者でその能力・努力からして将来一般よりかなり高額の収入を得られる蓋然性が認められ,亡Aの上海市における推定年収は,上海市と日本との経済的事情を加味したとしても,日本の年収水準をやや下回る程度であると考えるのが相当である。なお,亡Aが,日本で就職をする予定であったのであり,いずれは中国に帰国する予定であったわけではない旨の原告らの主張が採用できないことは,上記のとおりである。すると,日本の賃金センサス平成14年産業計,企業規模計,男性労働者高専・短大卒全年齢年平均賃金である501万1200円をもって,亡Aの基礎年収と認めるのが相当である。

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